給与減でも残業免除を求める向きも、ニーズ多様化の子育て世代

人事・採用最新動向

法改正に企業側は追いつかず

株式会社エフアンドエムは19日、2025年10月に施行された育児・介護休業法改正に伴う柔軟な働き方に関する実態調査を実施、その結果をとりまとめて公開した。人事担当者と一般従業員を対象にアンケートを行い、制度整備の進捗状況や必要とされる支援などについて分析している。

調査は2025年10月10日~10月14日の期間、従業員100人以上の企業の人事担当者と従業員を対象に実施、人事担当者206人、従業員408人から回答を得た。

2025年10月時点で、育児・介護休業法改正への対応が完了し、「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」を設置したかどうか担当者に尋ねたところ、「現在準備中」が35%、「対応完了している」は65%だった。

企業規模別に分析すると、100人以上300人未満の企業で「対応完了」は69%、300人以上1,000人未満の企業では61%、1,000人以上の企業では64%だった。対応の進捗状況はさほど企業規模に依存していないことが分かる。

現状に関する自由記述では、「要員不足」や「業務分担が難しい」、「現場の理解不足」といった運用段階での課題が多く挙がったといい、制度整備が進んでも要員配置や業務分担の難しさが対応を困難にしていると考えられた。

また、人事に対し自社の設置が現実的ではない制度について尋ねたところ、「時間単位や半日単位での休暇が取得できる制度」が17%で最も多く、次いで多いのは「テレワークの仕組み」の16%だった。現場の業務状況に合わせにくく、これらの準備は困難という声が多かったとされている。

3位は「会議をコアタイムに集中する制度」と「保育園等の設置」の12%、5位が「短時間労働でも給与や評価に影響がない制度」の11%、6位は「残業の免除」の10%となった。

柔軟な働き方

ニーズ多様化の従業員と企業意向にはギャップも

子育てと仕事の両立に必要な制度として、「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」5項目のうち、とくに重視するのは何か人事担当者と一般従業員のそれぞれに尋ねた。

すると人事担当者の回答は「始業時刻等の変更」が84%で最も多く、「短時間勤務制度」が75%、「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇」の52%などと続いた。

これに対し、一般従業員は「始業時刻等の変更」がやはり最も多かったが、58%と人事担当者よりは低く、2位は「短時間勤務制度」の44%、3位が「テレワーク等(月10日以上)」の41%となった。人事担当者では5位だった「保育施設の設置運営等」も34%と比較的高い。

このように従業員回答は企業側に比べ、ニーズが幅広く分散し、過程や働き方の多様化に応じた選べる制度を求める傾向が強いとみられた。

育児と仕事の両立を考える従業員のために必要だと考えるものを複数選択可で選んでもらった結果でも、違いは明瞭に現れた。

人事側は「時間単位や半日単位での休暇ができる制度」を75%が支持、「柔軟な働き方に対する上司や同僚の理解」がこれに次ぐ62%、「子の看護などで突発的な休みを取れる職場の雰囲気」が3位で53%、4位は「残業の免除」の50%、5位に「テレワークの仕組み」の47%などと続いた。

一方、従業員側は「時間単位や半日単位での休暇が取得できる制度」が63%でトップになったものの、2位は「子の看護などで突発的な休みを取れる職場の雰囲気」の53%。

3位が「柔軟な働き方に対する上司や同僚の理解」の52%、4位に「テレワークの仕組み」の45%、5位には「短時間労働でも給与や評価に影響がない成果型の評価制度」の42%がランクインしている。

人事で4位だった「残業の免除」は25%で低く、逆に「保育園等の設置」では従業員の25%が人事側の16%をやや上回った。従業員側の回答は分散傾向がここでも強く、画一的な制度整備では対応しきれない可能性が考えられた。

柔軟な働き方を実現するために、現在の給与より減少する場合、どの程度までなら受け入れられるか、従業員に尋ねたところ、多くの制度で「給与が減らない範囲で柔軟な働き方を望む」との声が寄せられたが、「残業の免除」では5%からそれ以上の給与が減少しても良いという人が39%にのぼった。

「会議をコアタイムに集中する制度」も減収を受け入れる派が27%とやや多く、「短時間労働でも評価に影響がない成果型の評価制度」も26%となった。

給与が減っても柔軟な働き方を望むと回答した人の理由を分析すると、家族・育児優先の考え方のほか、ワークライフバランスや自己充実のための理由。

作業効率が落ちる可能性を否定できないといった現実的・合理的面からの理由、キャリア継続のためならば仕方がないと考える向き、公平性や組織への配慮から受け入れるという理由などが挙がっている。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク

株式会社エフアンドエム プレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000082.000029825.html

生産性DX編集部

生産性DX編集部は、生産性向上に向けたDX活用の知見を、わかりやすく発信しています。経営や組織、働き方、テクノロジーまで幅広く取り上げ、生産性向上に取り組むすべての人に、中立的な視点で考えるきっかけや実践のヒントをお届けします。

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