初任給アップの波で揺れる給与カーブ
三菱UFJ信託銀行株式会社は11月4日、自社ホームページより、人事と年金の今が分かる「三菱UFJトータルリワードレポート11月号」の公開を開始したと発表した。
まず給与設計面では、2025年度は初任給が大幅に引き上げられ、企業の給与見直しが加速したことが報告された。背景には物価高による生活コストの上昇や人材獲得競争の激化などがある。この動きは単なる採用広報の一環にとどまらず、企業の人事制度全体に影響を及ぼしてきている。
人事コンサルタントとしても、現場において若手から中堅層との給与差が縮まり給与カーブが寝てきたという声がよく聞かれるようになったと感じるという。
しかし高水準な初任給で注目された企業には、打ち出し方や狙いにそれぞれ特徴があり、同業他社の金額を追いかけた場当たり的な対応では、給与カーブやレンジ設計が乱れるリスクが上昇するばかりで、自社らしい人材戦略が不可欠になっていると結論づけられている。給与金額の調整のみならず、人事制度全体の設計や運用の見直しも各社で求められているとされた。

2025年3月期の有価証券報告書分析から
有価証券報告書における人的資本情報の記載内容分析からは、次のような傾向が明らかになった。
人的資本に関する情報開示について、女性、従業員エンゲージメント、健康、人材育成の順に開示割合が高く、女性関連では女性管理職の開示割合が100%だった。このうちの開示レベル3(実績+目標)は75%となっている。一方男女間賃金格差の開示割合も100%だったが、こちらはレベル3がわずか3%にとどまった。
従業員エンゲージメントの開示割合は60%で、このうちのレベル3は41%だった。
製造業と非製造業の間で顕著な差は見られておらず、開示割合に16%以上の差があったのは、製造業の方が高いもので外国人役員、労働災害発生、非製造業の方が高いもので女性採用、健康、有給休暇取得、ポスト/ジョブチャレンジとなっていた。
年金ALM分析では、確定給付企業年金について、資産と負債のバランスを保つことが重要であり、長期運用として将来発生する負債を意識した運用が求められるとされた。
将来の負債の変化を把握できる年金ALM分析は、合理的な政策アセットミックスの策定に有効な手法となりえ、有益ともされている。年金ALM分析とは、資産と負債の両面から総合的に管理・分析することで、長期的な視点で年金制度運営に相応しい政策アセットミックスを決定する手段。制度の長期的な財政安定性を評価できる。
アセットオーナーにはガバナンス強化が求められており、年金ALM分析はその実務的基盤として重要な役割を担うようになってきている。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
三菱UFJ信託銀行株式会社 プレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000263.000036656.html
