ダイバーシティ&インクルージョンは、多様な人材が力を発揮し、組織全体の成長を促すための鍵です。本記事では、ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念から組織へ定着させるためのステップ、実際の取り組み事例、関連する法律・制度までをわかりやすく解説します。
目次
ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティ&インクルージョンとは、多様な個性や価値観を持つ人々を尊重しながら、すべての人が活躍できる環境を築く考え方です。
「ダイバーシティ」は、人種、国籍、性別、年齢、宗教、価値観などの違いを認め合うことを意味し、「インクルージョン」は、そうした違いを単なる差異としてではなく、それぞれの個性として受け入れ、組織や社会の中で活かしていく姿勢を指します。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、多様な人材の能力を引き出し、組織の成長と競争力強化につながる重要な取り組みとされています。
ダイバーシティ&インクルージョンが必要とされる3つの背景

ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景には、価値観の多様化や労働力不足、SDGsの推進など、現代社会ならではの課題があります。この章では、その3つの理由を解説します。
1.価値観の多様化
現代社会では、価値観やライフスタイルの多様化に加え、テクノロジーの進化によって消費者のニーズはますます複雑化しています。こうした変化に対応していくためには、異なるバックグラウンドや視点を持つ人材の意見を取り入れながら、新しい価値を生み出すことが欠かせません。企業には、変化する市場や技術に柔軟に対応できるよう、多様性を尊重した組織づくりが求められています。
2.少子化による労働力不足
少子高齢化の進行により、日本では労働人口が年々減少し、深刻な社会問題となっています。将来的には、働き手となる現役世代の割合がさらに減少すると見込まれており、企業にとって人材の確保はますます大きな課題となるでしょう。
こうした状況の中で、女性や高齢者、障害者、外国人など、さまざまな背景を持つ人材を積極的に活用し、より幅広い層の労働力を取り入れていくことが、企業の持続的な成長と安定した組織運営の鍵となっています。
3.SDGsの達成
ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、SDGs(持続可能な開発目標)の理念と深く結びついています。なかでも「ジェンダー平等の実現」「不平等の解消」「すべての人に平和と公正を」といった目標とは特に親和性が高く、企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことは、社会的責任を果たす上でも重要な意味を持っています。
現在ではSDGsと同様に、ダイバーシティ&インクルージョンも企業活動におけるスタンダードとして定着しつつあります。
ダイバーシティ&インクルージョンがもたらす3つの効果

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、組織に多くの効果をもたらします。この章では、優秀な人材の確保、発想力の活性化、社員のモチベーション向上という3つの主要な効果について紹介します。
1.優秀な人材の採用と定着
ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、優秀な人材の「採用」と「定着」の両面で効果を発揮します。
多様な価値観や背景を持つ人材に目を向けることで、従来の枠にとらわれず新たな人材を発掘でき、採用の選択肢を広げることが可能です。さらに、個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提供すると、従業員の満足度や働きやすさが向上し、結果として定着率の改善にもつながります。
人材確保の競争がますます激しくなる中、ダイバーシティ&インクルージョンは企業にとって有効な人事戦略のひとつといえるでしょう。
2.発想力が活性化し、パフォーマンスが向上
ダイバーシティ&インクルージョンで異なる価値観や経験を持つ人材が集まると、多様な視点からの発想が生まれやすくなり、革新的なアイデアの創出が期待できます。それにより、これまでにない商品やサービスが生まれれば、企業の競争力強化につながります。
さらに、多様な背景を尊重し合う職場では、心理的安全性が高まり、チームの協力体制やパフォーマンスが向上する好循環も生まれます。
3.モチベーションの向上
一人ひとりの価値観や背景が尊重されると、社員は自分の存在がきちんと認められていると感じ、モチベーションや当事者意識が向上します。それによって生まれる仕事への意欲や責任感は、前向きで活気ある職場づくりを後押しする原動力となります。
ダイバーシティ&インクルージョンを組織に定着させるための5つのステップ

ダイバーシティ&インクルージョンを実効性のある形で組織に取り入れるには、段階的な取り組みが欠かせません。この章では、組織への定着に向けた5つのステップを解説します。
1.行動計画を策定する
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れる際は、経営理念と行動指針を基に、目指す組織像とその実現に必要な施策を明確にする行動計画の策定が重要です。自社のビジネス環境を踏まえたうえで、戦略的に取り組むべき内容を具体化し、全社的な方向性を示しましょう。
2.制度・環境を見直す
多様な人材がそれぞれの力を発揮できる組織をつくるには、人事制度や職場環境の整備が欠かせません。一律のルールに縛られるのではなく、仕事内容を明確にしたうえで、誰もが納得できる公平な評価を行うことが重要です。
また、さまざまな働き方に対応できるよう、柔軟な仕組みを取り入れることもポイントです。フレックスタイム制や在宅勤務、さらに外国人や障害者への支援制度など、実情に合った制度や環境の整備が求められます。
3.管理職のマネジメント行動をアップデートする
多様な人材を活かすためには、管理職の行動の改革も不可欠です。
ダイバーシティ・インクルージョンを推進するためには、管理職がテレワークや時短勤務など柔軟な働き方を促進し、公平な成果評価を徹底することで、誰もが力を発揮できる環境を整える必要があります。また、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の研修などを活用して多様性への理解を深め、日々の対話や意思決定にも反映させましょう。さらに、1on1など部下との対話を重視し、心理的安全性のある職場づくりを目指すことが求められます。
4.社員の認識をそろえ、実践的な現場のルールとして根づかせる
多様性を尊重する組織づくりでは、研修やワークショップを実施するだけでなく、日常業務の中で迷わず判断できる「現場ルール」に落とし込むことが欠かせません。
たとえば、会議や意思決定の場では、意見が対立した場合でも一度は相手の考えを最後まで聞き、結論に至らなかった意見も議事録や共有ツールに残すことをルール化します。忙しい状況でも最低限守る行動として遮らない、人格否定をしないなどを明文化しておくことで、個人の善意や余裕に依存しない運用が可能になります。
こうした行動指針は、上長のフィードバックや評価項目と連動させることで定着します。ルールが守られなかった場合には、注意喚起や振り返りの場を設け、改善行動までをセットで確認します。意識づけにとどめず、業務プロセスと評価に組み込むことで、ダイバーシティ&インクルージョンは現場で機能する実践的なルールとして根づくでしょう。
5.取り組みを社内外へ発信し組織のスタンスを示す
社内でのダイバーシティ推進が一定の成果を見せ始めた段階では、組織としての取り組みや姿勢を社内外に明確に発信し、継続的なコミットメントを示すことが重要です。
まず社内に対しては、方針や目標、進捗を定期的に共有することで、全社員の理解と納得感を高め、現場主導の実践につなげます。加えて、社外に対しては、自社の人材戦略やダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組み・成果を積極的に発信し、企業としての価値観と社会的責任を明確に示しましょう。
こうした姿勢は、優秀な人材の共感を呼び、また、多様性が企業価値の向上と持続的成長につながることを資本市場に対しても伝える有効な手段となります。
ダイバーシティ&インクルージョンの具体的な取り組み例

この章では、企業が実際に取り組んでいるダイバーシティ&インクルージョン施策を、分野別にまとめています。企業が多様性を尊重し活かすために、どのような施策を行っているか確認してみましょう。
| 分野 | 主な取り組み内容 |
|---|---|
| 女性の活躍推進 | ・子育て等との両立を可能にする柔軟な勤務制度(時短・リモート等) ・女性管理職の登用、育児支援制度 |
| 障害者雇用 | ・法定雇用率の達成 ・スキル習得支援のための社内教育や支援ツールの導入 |
| 外国人の雇用・活用 | ・多言語対応の管理者配置 ・外国人留学生向け就職フェアの参加 |
| LGBTQ+支援 | ・同性パートナー対象の福利厚生 ・社内クラブ活動 ・LGBTQ+向け研修、啓発活動 |
ダイバーシティ&インクルージョン導入で知っておきたい法律・制度

ダイバーシティ&インクルージョンを実効性のある形で進めるには、関連する法律や制度の理解が欠かせません。主な制度とその概要を確認しておきましょう。
| 制度・法律名 | 概要 |
|---|---|
| くるみん | 国から子育て支援企業として認定されると「くるみんマーク」の使用が可能に。 ダイバーシティ&インクルージョン取り組みの対外的な証明ツールにもなる。 |
| 女性活躍推進法 | 女性の採用・昇進・両立支援を企業に促す。301人以上の企業は行動計画が義務。 |
| 障害者雇用促進法 | 障がい者の雇用義務を定め、法定雇用率や合理的配慮が求められる。 |
| 高年齢者雇用安定法 | 定年延長や継続雇用など、高齢者の就業機会を確保するための法律。 |
| 外国人雇用 | 在留資格確認と雇用状況の届出が必要。助成金制度も利用可能。 |
| パートナーシップ制度 | 自治体が同性カップルを公的に認定。企業も社内規定で対応を進める。 企業のパートナーシップ制度への理解は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するうえで、企業の本気度と信頼性を示す重要な指標となる。 |
ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人が安心して働ける職場をつくろう

多様な人が安心して働ける職場は、組織の力を最大限に引き出します。ダイバーシティ&インクルージョンを推進することは、変化の激しい時代を生き抜くための土台づくりです。自社の状況に合わせてダイバーシティ&インクルージョンを推進し続けることで、前向きな変化を積み重ねていきましょう。
