フレックスタイム制とは、就業規則や労使協定で定めた総労働時間の範囲内で、従業員が始業・終業時刻を選択できる働き方です。その中で重要な役割を担うのが、全員が共通して勤務するコアタイムです。
本記事では、フレックスタイム制におけるコアタイムの概要とメリット・デメリット、考え方、設定方法などを解説します。
目次
フレックスタイム制のコアタイムの概要

フレックスタイム制では、働く時間を柔軟に選べる一方で、一定の時間帯を共通勤務とするコアタイムを設ける場合があります。まずはコアタイムの定義とフレキシブルタイムとの違いを解説します。
コアタイムの意味
コアタイムとは、フレックスタイム制において1日のうち必ず勤務する必要がある時間帯を指します。始業・終業時刻を個人が自由に選べる制度であっても、業務の予定を立てやすくし、連携や意思決定を円滑に行うため、一定時間を共通の就業時間として設けるケースが一般的です。
コアタイムは、労使協定等で定められ、組織運営を補助する役割を担います。
フレキシブルタイムとの違い
フレックスタイム制では、勤務時間をコアタイムとフレキシブルタイムに分けて運用します。両者の違いは、以下のとおりです。
・コアタイム:あらかじめ定められた就業時間帯で、会議や連携業務を行うために設けられる
・フレキシブルタイム:出退勤の時刻を従業員が自由に選択できる時間帯
例えば、コアタイムを10時〜15時、フレキシブルタイムをその前後に設定すれば、早朝から勤務したり、夕方以降まで勤務したりすることが可能です。この区分によって、業務に必要な連携を保ちつつ、柔軟な働き方を実現できます。
フレックスタイム制になぜコアタイムが設けられるのか

フレックスタイム制では働く時間の自由度が高い反面、勤務時間が重ならず、会議や相談、情報共有が行いにくくなることがあります。そこで、一定の時間帯に稼働をそろえるために設けられるのがコアタイムです。
業務の分断を防ぎ、意思決定やチーム連携を円滑にすることで、フレックスタイム制を実務面で機能させやすくします。
フレックスタイム制のコアタイムを設けるメリット

業務やマネジメントの観点から見たコアタイムを設けるメリットを紹介します。
チームの連携が取りやすくなり業務の流れが安定する
コアタイムを設けることで、会議や相談、情報共有を行う時間帯が明確になり、チーム内外の連携が取りやすくなります。
部署やチームを横断した最低限の同時稼働時間が確保されるため、相談や意思決定が滞りにくく、業務全体の流れや判断スピードを安定的に維持しやすくなります。結果として、業務停滞や機会損失を防ぎながら、組織としての一体感も確保できるでしょう。
勤怠管理やマネジメントの負荷を抑えられる
コアタイムがあることで、管理者はメンバーの勤務状況や業務進捗を把握しやすくなり、指示や調整を効率的に行えます。
勤務時間の分散によって起こりがちな「連絡が取れない」「進捗確認が遅れる」といった課題を補完でき、個別対応に追われる負担も軽減されます。
対外対応・制度の安定運用を図れる
コアタイムの時間帯によっては取引先や顧客の活動時間帯に社員が重なりやすくなるため、対外対応の品質や信頼性を維持しやすい点もメリットです。
さらに、「実質的に固定勤務と変わらない」「自由度が高すぎて機能しない」といった極端な運用を防ぎ、制度の形骸化も防止できます。
フレックスタイム制のコアタイムを設けるデメリット

コアタイムの導入前に把握しておきたいデメリットを紹介します。
働く時間の自由度が下がり制度の柔軟性が損なわれやすい
コアタイムを設定すると、従業員が自由に働く時間を選べる範囲が狭まり、フレックスタイム制の柔軟性が低下する場合があります。
特にコアタイムが長すぎると、実質的に固定時間制に近い運用となり、制度本来のメリットを活かしにくくなります。家庭の事情や通院など、個々の事情に対応しづらくなる点も注意が必要です。コアタイムを必要最小限に抑え、フレキシブルタイムとのバランスを取る設計が求められます。
コアタイムに業務や会議が集中しやすくなる
コアタイムを設けると、全員が稼働する時間帯が明確になる一方で、会議や打ち合わせがその時間帯に集中しやすくなります。その結果、スケジュール調整が難しくなったり、会議が連続して業務効率が下がったりする可能性があります。
限られた時間内で議論を終える必要があるため、十分な検討ができないケースも生じやすくなるでしょう。こうした影響を抑えるには、事前に資料を共有したり論点を整理したりするなど、コアタイム内の会議を効率化する工夫が必要です。
あわせて、長時間の定例会議や説明中心の会議は原則としてコアタイム外に設定し、コアタイム内は短時間の意思決定や連携にとどめるといった運用ルールを設けることも有効です。
業務内容や外部対応によって不都合が生じる場合がある
コアタイムを軸に業務を組むことで、フレックスタイム制を採用していない取引先との対応に支障が出る場合があります。
コアタイム外に担当者が不在となり、連絡や対応が遅れると、業務の円滑さを損なうおそれがあるでしょう。外部との接点が多い業務では、制度そのものが使いにくくなるケースもあります。取引先への連絡可能時間の見える化や、属人化を避けたチーム対応体制を整えることが重要です。
フレックスタイム制におけるコアタイムの一般的な考え方と運用の幅

コアタイムの設定には法律上の固定ルールはなく、企業の実態に応じた柔軟な設計が可能です。一般的な考え方や運用の幅について解説します。
コアタイムの時間帯や長さに明確な決まりはない
フレックスタイム制におけるコアタイムは、法律上「何時から何時まで」「何時間」といった明確な基準が定められているわけではありません。労使協定で合意が取れていれば、時間帯や長さは企業ごとに柔軟に設計できます。
コアタイムは一律のルールではなく、業務内容や働き方に応じて調整するものと捉えるのが一般的です。
一般的には業務が重なりやすい10時〜15時前後が目安とされる
コアタイムは、会議や社内外の連絡が発生しやすい時間帯を基準に設定されることが一般的です。実務では10時〜15時前後が目安とされます。
1日の所定労働時間の大半を占める設定や、分割しても始業・終業時刻が実質固定される形は、フレックスタイム制の趣旨に反するので、注意が必要です。業務の連携を確保しつつ、前後の時間で柔軟な働き方を認めるバランス設計がポイントになります。
コアタイムを設けないスーパーフレックス制もある
フレックスタイム制では、コアタイムをあえて設けずに運用するスーパーフレックス制もあります。
全員が必ず勤務する時間帯を設定しないことで、より高い裁量を確保できる一方、情報共有や進捗管理の仕組みづくりが重要になります。業務の性質やチームの成熟度によっては、有効な選択肢となるでしょう。
フレックスタイム制のコアタイムを設定する方法

コアタイムを効果的に機能させるには、業務実態を踏まえた時間帯の設定と、制度としての明確なルールづくりが欠かせません。設定方法のポイントを紹介します。
業務内容に応じて全員が集まる必要のある時間帯を定める
コアタイムは、「全員が同時に働く必要がある業務がいつ発生するか」を基準に設定することが重要です。会議や相談、社外とのやり取りが集中する時間帯が明確な場合は、その時間を中心に設けることで、業務の停滞を防ぎやすくなります。
ただし、その必要性や発生頻度は部門や職種によって異なるため、必ずしも全社一律で設定するとは限りません。対外調整やチーム連携が多い部門と、個人作業が中心の職種では、求められるコアタイムの役割も異なります。
業務内容と実際の働き方を踏まえ、部門・職種ごとに最適な時間帯を見極めることで、制度の形骸化を防ぎやすくなります。
就業規則・労使協定でコアタイムの条件を明確にする
コアタイムを設ける場合は、就業規則への記載に加え、労使協定で条件を具体的に定める必要があります。
労使協定では、対象となる従業員の範囲や清算期間、総労働時間、標準となる1日の労働時間に加え、コアタイムやフレキシブルタイムを設定するかどうか、その内容を定めます。
就業規則にもコアタイムの時間帯や運用ルールを明記し、労働基準監督署へ届け出ることで、制度として正式に運用できる状態となります。
遅刻・早退・半休の取り扱いについて

フレックスタイム制では、コアタイムに遅刻や早退、所定の勤務が行われなかった場合の取り扱いは、就業規則に基づいて判断されます。
原則として、清算期間内の総労働時間で過不足を精算するため、コアタイム中に一時的な遅刻・早退があっても、最終的に総労働時間を満たしていれば賃金控除が生じないケースがあります。欠勤扱いの有無、精算方法、ペナルティや評価への反映などの具体的な取り扱いは、就業規則等で明確にしておくことが重要です。
また、年次有給休暇を取得した場合は、コアタイムを含めて労働したものとみなされ、半休を取得した場合も所定の時間数を勤務した扱いとなります。
フレックスタイム制のコアタイム導入時に注意すべきポイント

コアタイムの導入時に押さえておきたい注意点を解説します。
コアタイムを設ける目的を共有し、現場との認識ずれを防ぐ
コアタイムを導入する際は、その目的や役割を明確にし、現場での運用イメージと事前にすり合わせておくことが重要です。
また、就業規則を変更した場合は、その内容を従業員に周知すること自体が、制度を有効に運用する前提となります。導入の背景やメリットに加え、想定される影響や注意点も含めて丁寧に説明し、組織全体で共通認識を持つことが欠かせません。
導入後は定期的に運用の見直しをする
コアタイムは導入して終わりではなく、運用状況を踏まえて定期的に見直すことが重要です。
業務内容や働き方は時間の経過とともに変化するため、当初設定したコアタイムが実態に合わなくなるケースも少なくありません。運用開始後は、従業員の声や勤怠状況を確認しながら、必要に応じて時間帯や対象範囲を調整することで、制度の形骸化を防ぎやすくなります。
継続的な見直しを前提とすることが、コアタイムを有効に機能させるポイントです。
フレックスタイム制のコアタイムを理解し、自社に合った就業時間を検討しよう

フレックスタイム制のコアタイムは、必ず設けるべきルールではなく、制度を支えるための「目的達成の手段」です。業務内容や連携の必要性を踏まえ、メリット・デメリットを整理したうえで設計することが重要になります。
自社の業務特性・組織規模・働き方の実態を踏まえ、最適な就業時間のあり方を検討しましょう。
