裁量労働制とは?仕組み・対象職種・残業代の考え方までわかりやすく解説

ワークスタイル

裁量労働制は、労働時間ではなく成果を重視する働き方として導入されている制度です。近年は働き方改革や労働制度の見直しに関する議論の中で、裁量労働制のあり方も政策テーマとして取り上げられています。

本記事では、裁量労働制の基本的な仕組みから対象業務、残業代や割増賃金の考え方、導入・運用時の注意点までをわかりやすく解説します。

裁量労働制とは

裁量労働制のイメージ:ノートPCで業務を行うビジネスパーソン

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、企業と労働者であらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払う制度です。

例えば、みなし労働時間を1日8時間と設定した場合、実際の労働時間が設定した時間より短くても長くても、原則として8時間分の賃金が支払われます。この制度は労働基準法上の「みなし労働時間制」の一つであり、対象業務は法令で限定されています。

2026年の執筆時点では、政府による制度の見直しや適用範囲の検討が議論されており、専門職を中心に制度のあり方が再び注目されています。裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類があります。

裁量労働制が適用される業務・職種の範囲

裁量労働制の対象業務を検討するイメージ:ビジネスパーソンのミニチュア

裁量労働制は、すべての業務や職種に適用できる制度ではありません。

業務の性質上、時間配分や進め方を労働者の裁量に委ねる必要があり、業務の遂行手段や時間配分の決定等について、会社が具体的な指示をすることが難しいものとして法令等で定められた業務に限って認められています。ここでは、裁量労働制が適用される業務・職種の範囲を解説します。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、遂行方法や時間配分を労働者の裁量に大きく委ねる必要がある専門的な業務に適用される制度です。対象となる具体的な業務内容(職種)は厚生労働省令および大臣告示で限定されています。2026年2月時点では20業務が該当します。

【主な対象業務の例】
・研究開発業務
・情報処理システムの分析・設計業務
・新聞・出版・放送における取材・編集業務
・広告・服飾などのデザイン業務
・弁護士、公認会計士などの専門職
・合併・買収に関する調査・分析および助言業務

厚生労働省『専門業務型裁量労働制の解説』

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、事業運営に関わる企画・立案・調査・分析を担う業務で、遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある場合に適用される制度です。専門業務型のように業務内容(職種)が限定されているのではなく、対象となる業務の性質(4要件)が定められています。

個別の営業活動などは対象外となり、導入には労使委員会の決議が必要です。

【対象となる業務(4要件)】
1.事業運営に関する業務
2.企画・立案・調査・分析を行う業務
3.業務の進め方や判断方法を、労働者自身に委ねる必要があると客観的に認められる業務
4.業務を行う方法や手順について、労働者に幅広い裁量が与えられている業務

【具体的な業務例】
・経営企画部門における経営計画の策定業務
・人事部門における人事制度の企画・設計業務
・財務部門における財務戦略や資金計画の策定業務
・広報部門における広報戦略の立案業務
・営業企画部門における全社的な営業方針の策定業務

厚生労働省『企画業務型裁量労働制の解説』

裁量労働制が設けられた目的

裁量労働制の目的のイメージ:アイデアや目標を示すアイコンとビジネスパーソンのミニチュア

裁量労働制の目的は、時間に縛られない働き方を通じて生産性を高めることです。研究・開発・企画業務などでは、決められた勤務時間内で働くことが必ずしも効率的とは限りません。

そこで、始業・終業時刻を含む労働時間管理を本人に委ねることで力を発揮しやすくなり、創造性や付加価値の向上が期待されます。

裁量労働制と他の労働時間制度の違い

労働時間制度の違いのイメージ:複数の時計とビジネスパーソンのミニチュア

裁量労働制と他の労働時間制度の違いは次のとおりです。

制度名 制度の詳細
裁量労働制 実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を労働時間として扱う制度。
専門業務型と企画業務型の2種類があり、専門業務型は対象業務が法令で具体的に限定され、企画業務型は業務の性質(4要件)を満たしていなければならない。
変形労働時間制 一定期間(週・月・年など)の平均労働時間が法定労働時間内に収まる範囲で、特定の日や週の労働時間を延長できる制度。
繁忙期と閑散期がある業務に向いており、月・年単位の変形時間制の場合は職種の制限はない。
週単位の場合は対象業種や事業場規模に要件がある。
フレックスタイム制 一定期間内の総労働時間を定め、その範囲で始業・終業時刻を労働者が選択できる制度。
コアタイムが設定されている場合は、その前後の時間に出勤・退勤を自分で決められる。
事業場外みなし労働時間制 社外で業務を行い、労働時間の把握が困難な場合に、所定労働時間を働いたものとみなす制度。
外回りや出張が多い業務が想定されているが、連絡手段などにより時間管理が可能な場合は適用されない。
高度プロフェッショナル制度 高度な専門知識を持ち、年収要件を満たす労働者を対象に、休憩・休日などの規定を適用しない制度。
成果や役割に基づく評価が前提で、労働基準法の時間規制そのものが外れる点が裁量労働制との大きな違い。
管理監督者 労働条件の決定や労務管理について、経営者と一体的な立場にある者を指し、労働基準法上の労働時間・休憩・休日などの規制の適用除外となる。
該当するかどうかは役職名ではなく、実際の勤務態様、職務内容や責任・権限の範囲、待遇などを総合的に見て判断される。

裁量労働制に関するよくある誤解

裁量労働制の理解・確認のイメージ:時計の上に集まるビジネスパーソンのミニチュア

裁量労働制は、自由度が高い制度である一方、内容を誤解したまま導入すると法令違反につながりかねません。

例えば「労働時間を管理しなくてよい」「企画部門なら一律で適用できる」「会社が一方的に導入できる」といった認識は誤りです。対象業務は専門業務型・企画業務型それぞれ法令で厳格に限定されており、制度適用に必要な手続きも両者で異なります。

また、労働時間の把握や健康確保措置、記録の保存も義務化されています。制度の趣旨を正しく理解し、形式だけではなく実態が伴っているかを常に確認することが重要です。

裁量労働制導入・運用の注意点

裁量労働制の注意点のイメージ:注意を示すマークと「注意」の文字ブロック

裁量労働制は柔軟な働き方を実現できる制度ですが、導入や運用には慎重な対応が求められます。手続きや制度設計を誤ると、企業・従業員の双方にリスクが生じる可能性があります。

導入時の手続きだけではなく、制度が適切に機能しているかを継続的に確認することも重要です。

導入時の検討事項・注意点

裁量労働制の導入にあたって、制度要件を満たしているかを確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。専門業務型では労使協定の締結、企画業務型では労使委員会の決議が必要となり、いずれの場合も制度適用には本人の個別同意や同意撤回手続きへの対応が義務付けられています。

制度の趣旨は、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねることにあります。裁量を前提とする働き方では従来の時間管理型マネジメントが通用しにくくなるため、業務設計や評価方法を見直さないまま導入すると、生産性低下や制度形骸化につながる可能性があります。

運用時のチェックポイント

実際の労働時間がみなし労働時間とかけ離れていないかを確認します。乖離が大きい場合は、制度設計や業務量の見直しが必要です。

【1.実労働時間とみなし労働時間の乖離】
裁量労働制では一定の場合を除き追加の残業代が発生しないため、業務量が過大な場合は長時間労働につながるおそれがあります。

【2.業務量の設計が適切か】
裁量労働制では一定の場合を除き、長時間働いても追加の残業代は発生しません。そのため業務量が適切に調整されていないと、過重労働につながるおそれがあります。

【3.制度の適用対象が適切か】
裁量労働制は裁量を発揮できる業務を前提とする制度です。適用対象や業務設計が不適切な場合、従業員に過度な負担がかかる可能性があります。

【4. 労働時間管理と健康確保措置】
裁量労働制でも出退勤時刻や勤務状況を客観的に記録し、一定期間保存する義務があります。また、長時間労働を防ぐための健康・福祉確保措置や苦情処理体制の整備も求められます。

裁量労働制を適切に運用した場合に期待できる効果

裁量労働制の効果のイメージ:右肩上がりのグラフを拡大鏡で確認する様子

よくある間違いや注意点を正しく理解し、法令に沿って丁寧に運用した場合には、専門性の高い業務において裁量を活かした働き方が可能となります。

企業側・従業員側にとって業務効率や納得感の向上といった、一定のメリットが期待できます。

裁量労働制における残業代について

裁量労働制における残業代のイメージ:時計と賃金を示すブロック

裁量労働制では「残業代が出ない」という印象を持たれがちですが、すべてのケースで賃金が固定されるわけではありません。ここでは、残業代が発生しない原則と、例外として残業代が必要となる場面を解説します。

裁量労働制では原則として残業代が支払われない

裁量労働制では、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとして賃金が支払われます。「みなし労働時間」を1日8時間以内で設定していれば、ある日の実労働が9時間でも10時間でも残業代は発生しません。

逆に、実労働時間が設定時間より短くても、給与が減額されることはありません。これは、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ね、労働時間ではなく成果や生産性を重視する制度設計によるものです。

ただし、裁量労働制は無制限の長時間労働を認める制度ではなく、法定労働時間の枠組み自体がなくなるわけではありません。

裁量労働制でも残業代が発生するケース

裁量労働制であっても、場合によっては残業代の支払いが必要です。

【残業代が発生するケース】
1.みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて設定されている場合
2.22時から翌5時までの深夜労働が行われた場合
3.法定休日に労働した場合
4.法定休日以外の休日(法定外休日)に労働し、週40時間を超えた場合

1の場合は、あらかじめ36協定(法定労働時間を超える労働や休日労働を行うために、労使で締結・届出が必要な協定)を締結した上で、超過分について時間外の割増賃金を支払う必要があります。

また、深夜労働や休日労働は時間帯や労働日そのものが重視されるため、「みなし労働時間」の対象外となり、裁量労働制でも実労働に基づく割増賃金が発生します。

厚生労働省『36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針』

裁量労働制は「自由な働き方」と「適切な運用」が両立してこそ活きる制度

裁量労働制による働き方のイメージ:PCで業務を行うビジネスパーソンとデジタルアイコン

裁量労働制は、労働時間ではなく成果を重視し、自律的な働き方を可能にする制度です。一方で、残業代や割増賃金の扱い、健康確保措置など守るべきルールも多く存在します。

制度の仕組みを正しく理解し、適切に管理・運用することで、企業と従業員の双方にとって価値のある働き方につながります。

岩下 等(社会保険労務士)

人材派遣会社や会計・労務管理系システムベンダーでの管理部門実務を経て、社労士法人に勤務。
採用・教育・労務管理からシステム要件定義まで幅広い業務に従事し、現在は中小企業向けに就業規則作成、労務相談、システム導入支援を行う。
人事課題やIT化の悩みに寄り添い、労務×システムの専門性を活かしたワンストップ支援を提供。
経営者・従業員双方の視点に立ち、柔軟で丁寧な対応を心がけている。
社会保険労務士法人ヒューマンリソースマネージメント 代表社員
https://www.human-rm.or.jp/

生産性DX編集部

生産性DX編集部は、生産性向上に向けたDX活用の知見を、わかりやすく発信しています。経営や組織、働き方、テクノロジーまで幅広く取り上げ、生産性向上に取り組むすべての人に、中立的な視点で考えるきっかけや実践のヒントをお届けします。

関連記事

TOP
CLOSE