議事録や社内文書、メール作成、アイデア出しなど、幅広い業務で生成AIを活用する企業が増えています。業務効率化につながる便利なツールである一方、情報漏えいのリスクや回答の精度に不安を感じるケースも少なくありません。ここでは生成AIの主な問題点と、リスクと向き合いながら安全に活用するための対策を紹介します。
生成AIが抱える主な問題点

生成AIは、その仕組み上いくつかの弱点やリスクを伴います。ただし、あらかじめ注意点を理解しておけば、それらの多くは防ぐことが可能です。企業が特に押さえておきたい代表的な問題点を整理します。
【生成AIの問題点①】出力内容の信頼性
生成AIは内容を理解しているわけではなく、確率的に文章や画像を生成しています。そのため、事実とは異なる情報や存在しないデータを、もっともらしく提示することがあります。
このような生成AIによる誤った情報をハルシネーション(幻覚:Hallucination)と呼びます。他にも、同じ質問でも回答が変わるなど出力の品質にばらつきがあったり、学習データの偏りによって偏見や不適切な表現が含まれる場合があったりと、出力内容の信頼性における問題は否めません。
【生成AIの問題点②】情報漏えい
生成AIに機密情報や個人情報を入力した場合、そのデータが外部に流出するリスクがあります。クラウド型の生成AIでは、入力内容がサービス提供者側のサーバーで処理されるため、設定や運用によっては学習データとして利用される可能性があります。
特に契約書、顧客情報、売上データ、未公開資料などは企業の競争力に直結する重要情報です。文書の要約や添削のために社内資料をそのまま貼り付ける利用方法にも注意が必要です。また、従業員が個人アカウントで業務利用する「シャドーAI」では、組織の管理が及びにくく、意図しない情報共有や外部流出につながるリスクがあります。
【生成AIの問題点③】著作権侵害
生成AIは大量の既存コンテンツを学習しているため、既存の文章や画像と類似した表現・構図が生成される場合があります。利用者本人が意図せず他者の著作物に似た成果物を作成してしまうケースもあり、その生成物を広告やWebサイト、営業資料などに利用した場合、権利侵害が問題となる可能性があります。なお生成AIと著作権の関係については、現在も法的整理が進められている段階です。
【生成AIの問題点④】第三者による悪用・なりすまし被害
ここまでは生成AIを利用する側の問題点について解説しましたが、企業側が生成AIで作られたコンテンツの被害に遭うリスクも存在します。その代表例が、実在人物の顔や声を再現した動画や音声を作成する「ディープフェイク」です。
本人が話していない内容をあたかも発言したように見せることが可能で、企業の経営者や担当者になりすました指示・詐欺行為などに悪用された事例も報告されています。また偽画像や偽動画がSNSなどで拡散し、企業の信用や社会的評価に影響するケースも見られます。
生成AIが抱える問題に対する効果的な対策

生成AIはリスクがあるから使わないのではなく、注意点を押さえながら活用していくことが現実的です。特別なシステムや専門知識がなくても、日々の運用ルールを整えるだけで防げるトラブルは多く、以下では取り組みやすい基本的な対策を紹介します。
機密情報・個人情報は生成AIに入力しない
クラウド型のサービスでは、生成AIに入力したデータは外部サーバーで処理されることが多く、契約書、顧客情報、個人情報、未公開資料などの入力は情報漏えいの原因になり得ます。
要約や添削の目的でも、社内文書をそのまま貼り付ける利用方法には注意が必要です。入力して良い情報と避けるべき情報の範囲を社内であらかじめ決めておくことが重要で、従業員が個人で生成AIを利用する「シャドーAI」でも同様のリスクが生じる点を忘れてはなりません。
オプトアウト設定を活用する
クラウド型の生成AIサービスの中には、入力データをモデルの追加学習に利用しないよう設定できる「オプトアウト機能」を提供しているものもあります。こうした設定の有無や適用範囲を事前に確認することは、情報管理上のリスクを低減する一助になります。
ただし、すべてのサービスでオプトアウト設定ができるわけではありません。設定だけで完全にリスクが解消されるわけでもないため、利用ルールの整備や入力情報の制限とあわせた多層的な対策が重要です。
生成AIの利用ルールを定める
従業員ごとに生成AIの使い方が異なると、情報管理や品質管理が難しくなります。利用可能なツールや用途、禁止事項をあらかじめ整理しておくことが大切です。個人の判断での利用が広がると、組織としての統制が取りにくくなります。簡単なガイドラインやチェックリストがあると判断基準を揃えやすく、利用方法や事例を社内で共有することで安全な活用が広がっていきます。
生成AIの出力は必ず人が確認する
生成AIの出力には誤情報や不正確な内容が含まれる場合があり、特に数字や固有名詞、専門情報は誤りが生じやすい点に注意が必要です。議事録や社内資料、対外文書をそのまま利用すると判断ミスにつながる可能性があるため、公開前や提出前に人の目で内容を確認する工程が欠かせません。生成AIは完成品を作るツールというより、下書き作成を支援する補助ツールとして活用するのが現実的です。
商用利用時は生成AIの権利関係を確認する
生成された文章や画像が既存の作品と似た内容になることがあり、利用者本人にその意図がなくても、結果的に権利侵害とみなされるケースがあります。広告やWebサイト、営業資料など社外に公開する用途では特に注意が必要です。
Google画像検索や無料の類似画像検索ツール(TinEyeなど)を活用して類似性を確認することが大切で、生成AIと著作権の法的解釈は現在も整備が進んでいる段階であるため、最新の法律やガイドラインの動向にも注意を払う必要があります。
生成AIの著作権リスクとは│企業が知っておくべき最新動向と対策
生成AIに関するリテラシーを高める
生成AIの仕組みや限界を知らないまま利用すると誤用が起こりやすく、ハルシネーションやバイアスなどの特徴をあらかじめ理解しておくことが重要です。研修や勉強会を通じて基本的な知識を社内で共有し、実際の業務で試しながら使いどころや注意点を学んでいくことが効果的です。
加えてディープフェイクのように、実在人物になりすました偽動画・偽音声が業務連絡や指示に悪用されるリスクについても、理解を深めておく必要があります。経験を重ねることで、生成AIとの適切な距離感が身についていきます。
生成AIの運用ルール作成のポイント

生成AIの活用が広がるほど、個人の判断だけに任せた運用ではトラブルが起こりやすくなります。組織として一定の運用ルールを定めておくことで、情報漏えいや品質のばらつきを防ぎやすくなります。難しい仕組みよりも、シンプルで守りやすいルール作りが重要です。
生成AIの利用目的と範囲を明確にする
生成AIを利用する目的やツールの種類、利用して良い業務をあらかじめ整理しておきましょう。利用目的と範囲を明確にすることで、過度な依存や誤用を防ぎやすくなります。どんな業務で生成AIが使えそうか、すでに使用している業務はあるか、判断に迷いやすいケースはどんなものがあるかなど、現場の声をヒアリングすることも大切です。
生成AIの入力ルールと確認フローを決める
個人情報・機密情報などの入力禁止情報を明文化し、生成結果は必ず人が確認する手順を設けます。社外公開前のチェック体制や責任者を決めておくことも重要で、判断基準を共有することで運用が属人化しにくくなります。
運用ルールの社内周知とプロセスを決める
全従業員が運用ルールを理解し、正しく生成AIを活用できるよう周知することが求められます。説明会や研修、マニュアル配布などを通じて基本的な使い方を共有し、判断に迷った場合の相談窓口や責任者もあわせて決めておきましょう。
例えばメールや音声、動画による重要な依頼・送金指示・機密情報の共有依頼については、別経路で本人確認を行うなど、なりすまし被害を防ぐための確認フローを設けることも有効です。利用事例やトラブル事例を社内で共有することで、継続的な理解の深化につながります。
定期的に見直しながら運用する
生成AIの機能やサービスは日々進化しており、運用ルールは一度作って終わりではなく、状況に応じて更新する必要があります。実際の利用事例やトラブルを振り返りながら改善を重ね、完璧を目指すよりも使いながら育てていく姿勢が現実的です。
参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」
生成AIの問題点を知り対策しよう

生成AIは業務効率化に役立つ一方、いくつかの注意点があります。仕組みや弱点を理解して使う姿勢が欠かせません。機密情報の管理や出力内容の確認といったルールを整備し社内に共有することで、多くのトラブルは防ぐことができます。生成AIの可能性を最大限に生かすためにも、正しく活用できるルール作りと運用を実践していきましょう。
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